遺言の必要性

遺言の必要性

遺言書を作成する必要性が高い場合と言うのがあります。具体的にどのような場合か、いくつかを以下にあげてみます。

事例1 子供も親もおらず、配偶者と兄弟姉妹がいる

子供はいなくて、両親は既に亡くなっている。家族は妻だけで、後は田舎に何年もあってない弟が1人だけ、と言うような場合です。

このケースでは相続人は奥さんと田舎にいる弟で、遺言がなければ、財産を奥さんが4分の3、弟が4分の1法定相続することになります。つまり、今、奥さんと2人で住んでいる自宅も、奥さんと弟の共有という事になってしまいます。法定相続という場合には、全てのものが奥さんと弟の共有になるのです。

ですから、例えば、自宅の価格が3千万円でその他の財産が1千万円だったとしても、奥さんが自宅を相続して、弟がその他の財産を相続する、ということにはならないのです。

これは大事なところなので勘違いしないようにしてください。

現実的な処理としては、自宅を奥さん1人のものにするために、遺産分割をすることになるケースが多いですが、弟が反対すれば遺産分割もできなくなりますので、紛争の火種をはらんでいると言えます。

したがって、この場合には、遺言が非常に有効です。一言、「全財産は妻に相続させる」あるいは「自宅の土地建物は妻に相続させる」と書いておけば、相続の手続は円滑に行われることでしょう。

事例2 遺産をめぐって相続人の間で対立が予想される

先述しましたが、決してドラマの中だけの話ではなく、現実にも非常に多いパターンです。

典型的なものとして、父親が亡くなり、本来であればその3人の子どもが相続人になるはずであったが、そのうちの1人が既に死亡しており、その死亡した子どもの子ども、つまり孫が代襲相続人として、相続人の中に含まれているというケースがあります。

兄弟同士なら何とかうまく話し合いでまとまりそうな感じですが、この孫が割り込んできたために、事態は紛糾することになります。もっと正確に言うと、積極的に割り込んでくるのは、孫の母親、つまり「死んだ兄貴の嫁」です。

また、相続人である子ども達の中に、先妻の子と後妻の子が混ざっているというケースは、当然、どちらの子も法律上は優劣のない相続人ですから、紛争に発展する可能性を大いに秘めています。訴訟までもつれ込むことも考えられます。

この場合も遺言が有効です。遺言で分配方法を明確にしておけば争う余地もなくなりますし、遺言者の意思というものは、基本的には尊重されるものです。

事案3 相続人以外に財産を残したい

相続人以外の人に財産を遺すことを遺贈と言いますが、この場合には上の2つとは異なり、遺言が必須となります。遺言がなければ、遺贈はできません。

相続人の方が気を利かせて、「愛人のK子さんには生前、父が随分お世話になったから、相続財産の中から1千万円を贈与しよう」などという非現実的なことが起こりえない限り、K子さんは1円たりとも手にすることはできないのです。

遺言をする人が、自らの意思で、お世話になった人へのお礼として財産を贈りたいのであれば、必ず遺言を作成する必要があります。遺言で「1千万円を遺贈する」と書いておきさえすれば、その相手が愛人であろうが、宗教団体であろうが、相続人としては、遺留分が侵害されない限りどうしようもないのです。

上記以外にも遺言が必要なケースは考えられますが、不動産は共有状態になると権利関係が複雑になりますので、相続人が複数いて、相続財産に自宅が含まれる場合には、遺言を作成されることをおすすめします。