養育費に関し決定すべき4つのこと

養育費の取り決めの際に必ず決定すべきこと

養育費の取り決めに際して、次の4つのことを必ず決めておかなければなりません。

  • 養育費の金額
  • 養育費をいつまで支払うのか
  • 養育費をどのように支払うのか
  • イレギュラーな事態への対応方法

では1つずつ解説していきます。

子ども1人あたりの養育費の金額をいくらにするのか

養育費の取り決めというと、当然その金額が必要です。

養育費の取り決めはしたが、金額を決め忘れたなどということはおそらくないでしょう。

金額の決め方などについては、この記事を参考にしてください。

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とにかく、まず金額を決める、これは最優先事項で間違いありません。

養育費をいつまで支払うのか

養育費を支払う約束をした場合でも、金額以外の部分については決めていないということがよくあります。

例えば、養育費をいつまで支払うのか、つまり養育費の支払終期についてです。

実際にきちんと養育費が支払われている場合、いつまで支払ってもらえるのかというのは、非常に重要な問題です。

特に、子どもが大学へ行っている場合には、大学を卒業するまで支払ってもらいたいと思うのが普通でしょう。

法律上の支払終期の解釈

ところで、養育費の支払は子どもが20歳になるまでだと考えている方は多いと思いますが、いかがでしょうか。

確かに、その考えは間違っていませんが、ではなぜそう考えているか、はっきりと説明できますか?

実は、「養育費の支払は子どもが20歳に達するまでとする」といったような条文は存在しません。

ただ、養育費とか親子関係とかについて規定している民法の条文を解釈していくと、20歳になった子どもについては、養育費が支払われる対象ではないという結論になるのです。

その理論構成に興味がある方は、以下をクリックしてみてください。ちょっと面倒くさい話なので、興味のない方は飛ばしてください。

郵送だけで手続が可能な理由

養育費について記載された条文をご覧ください。

民法766条1項
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

赤いアンダーラインの部分が、養育費のことです。

民法820条
親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

これはどういうことかと言うと、「子の監護」は「親権」という権利の中の一種であるということです。

親権者が監護権を持っており、その監護のために必要な費用を受け取る権利があることを意味します。

つまり、親権者だからこそ養育費を支払ってもらえるということになります。

ところで、民法には次のような条文があります。

民法4条
年齢二十歳をもって、成年とする。民法818条1項
成年に達しない子は、父母の親権に服する。

この2つの条文によると、20歳未満は成年ではないので、父母の親権に服することになります。

逆に言うと、20歳以上は子は親権に服さない、つまり親は親権者ではなくなるということです。

結論としては、養育費を支払ってもらえる条件は親権者であることですが、子どもが20歳に達すると親は親権者ではなくなってしまうので、養育費を支払ってもらう権利もなくなるというわけです。

養育費の支払終期に関する実務上の取り扱い

養育費の支払終期に関し、裁判など実務上での取り扱いとしては、個々の事情に応じて、子どもが大学を卒業するまで養育費を支払うのが相当と認められる場合には、例え成年に達していたとしても、養育費を支払うべきだと考えます。

具体的には、両親がともに子どもの大学進学を望んでいた場合や、養育費支払義務者が経済的に養育費を支払える状態にある場合などです。

現在では、大学へ進学するのは珍しいことではありませんので、養育費についての取り決めをする段階で、「子どもが大学を卒業するまでは養育費を支払う」と決めておくほうが良いでしょう。

養育費をどのように支払うのか

養育費は通常、1か月毎の分割払いです。しかし、一括で支払うという方法もあります。

養育費の支払は分割か一括か

分割払いのデメリット

1か月毎の分割の場合、相当な長期間になる覚悟が必要です。

支払が長期化することの最大のデメリットは、途中で支払われなくなる可能性が高いということでしょう。

また、養育費の支払を受けるという点で、離婚した相手と長期間つながりを持たなくてはなりません。

その点、一括払いであれば、途中で支払われなくなる危険もありませんし、一度支払を受けてしまえば、その後は全く接触をする必要もありません。

一括払いのデメリット

養育費の金額というのは、合計すると相当な高額になることが多くあります。毎月5万円の養育費を10年間支払うとすると合計600万円になります。

離婚に際して、これだけの金額を一度に支払えるケースというのはそう多くはないと思います。

実際、養育費を一括で支払う場合には、分割で支払う合計額よりも、少額で合意をすることが多いはずです。

分割払いのリスクを避けるためであれば、多少の減額に応じるのも頷けます。

養育費の具体的な支払手続

最も一般的な養育費の支払方法は、毎月1回、指定された口座に入金するというものでしょう。

ただ、これだと支払義務者の積極的な行動が必要になりますので、時間の経過とともに支払われなくなる可能性は高くなります。

そこで、私はいつも、養育費の支払を受ける方からの相談には、金融機関の自動送金サービスを利用するよう薦めています。

支払義務者が何もしなくても、自動的に送金されますので、長期間にわたって支払を確保するには、非常に有効な手段だと思います。

イレギュラーな事態への対応方法

養育費の支払は、長い場合には20年以上に及ぶこともあり、当然、その間にはさまざまなことが起こります。

子どもが怪我をして高額な手術代が必要になるかもしれませんし、海外へ留学することになるかもしれません。

そういった全ての事態を想定して、養育費の取り決めを行うことは不可能ですが、私立大学への入学など、ある程度想定できるものについては、養育費の取り決めの段階で、どのように対応するのか、できるだけ具体的に盛り込んでおくべきでしょう。

一般的によく使われる文言としては、次のようなものがあります。

「当事者双方は、子どもの病気、進学等の特別の費用の負担については、別途協議することとする。」

また、離婚後、いずれかが再婚をすることも十分考えられますので、以下のような文言で、この点を取り決めに加えておくケースもよくあります。

「養育費を受け取る側が再婚したときは、養育費を支払う側に対し、養育費について、再婚した月以降の支払を免除する。」

養育費の取り決めをすることは非常に重要です。子どもの未来が変わる可能性すらあります。

離婚時には、相手との感情的な対立があるかもしれませんが、冷静になって、粛々と手続を進めるべきです。

それが難しい場合には、弁護士さんなどに依頼することも検討すべきだと思います。