遺言の意義

遺言の意義

遺言を作成する意義とは、おそらく多くの場合、「財産の分配方法を決めるため」ということになるのだと思われます。

誰にどれだけの財産を遺すのか。どの財産は誰に譲るのか。そして、誰には財産を渡さないのか。

こういった財産の分配方法を指定することが、遺言の重要な役割であることは間違いありません。

しかし、遺言はそれだけのものではありません。

遺言というのは、遺言をする人が自分の死後にどうして欲しいのかという意思を明らかにするものです。その意思の表明は、多くの場合には財産の分配方法の指定という形をとって行われるわけです。

例えば、長男に自宅の土地と建物を残すという遺言があれば、それは「お母さんのことはお前に頼んだぞ。ちゃんと老後の面倒を見てくれよ」というメッセージが込められてるのだと考えることができます。

逆に、次男には全く相続させないという遺言であれば、それは「お前は放蕩三昧で親に苦労ばかりかけてきた。これからは人に頼らず自分の力で生きて行け」という愛のムチだと受け取ることもできます。

そして、このように遺言者の意思を明示または黙示するということには、相続開始後のトラブルを回避するという重要な役割もあるのです。

2時間ドラマなどでは、よく相続に関する事件が描かれています。

しかしそれは何もドラマの中だけの話ではありません。

ドラマのようにダイナミックでミステリアスなものではないにしても、現実にも頻繁に発生していることなのです。

そして、そういったトラブルの多くは、遺言がなかったために引き起こされています。

もし遺言がなければ、残された財産は法定相続されるか、遺産分割ということになります。

法定相続は、法律で決められた相続分をそのまま適用するわけですから、当然相続人個々の事情などは斟酌されず、実情に沿わない不公平な結果になることがよくあります。

「同居してお父さんの介護をした私が、どうして盆と正月しか顔を見せない妹と同じ相続分なのよ!」といった長女の恨み言も理解できます。

そこで遺産分割で不公平のないように分配しようということになるわけですが、相続人全員が納得すように、話し合いをして遺産を分けるという事はなかなか難しいもので、場合によってはさらなる争いのきっかけになることも少なくありません。

いわゆる「争続」というやつです。

そのような争いを未然に防ぐという意味でも、遺言を作成することは非常に有効な手段だと思われます。

遺言によって遺言者の意思が明らかにされていると、相続人としても心情的に納得しやすいでしょう。仮に納得できなかったとしても、遺言があれば、争う余地がなくなります。

法律は、遺言にそれだけの効力を与えているのです。

遺言者の最後の意思は、できる限り尊重すべきであるということを、法律が明らかにしているのだとも言えます。