遺留分

遺留分

例えば、相続人が長女と二女の2人だけという状況の中、父親が「全財産は二女に相続させる」という遺言を残して亡くなったとします。

父親は、小さい頃から明るくて社交的で甘え上手な二女の方をかわいがっていたので、二女に自分の財産を全てあげようとしたわけです。

当然、長女としては黙っていられません。父親が妹の方を可愛がっていたことは気づいていたので、妹の方が多く相続することになるだろうと、ある程度想像していましたが、全財産とは想定外だったのです。

住宅や車のローンに来年大学生になる息子の学費、毎月1万円を超える娘の携帯料金に値上げしろとうるさい夫の小遣い…。

長女は、父親の遺産で多少はやりくりも楽になるかとあてにしていたのですが、その思惑は全くはずれてしまいました。

このように、相続人であるのに理不尽(少なくとも遺産をもらえなかった相続人にはそう思えるでしょう)な遺言があるため全く財産が手に入らないという場合に、遺留分が重要になってきます。

遺留分とは、簡単に言うと、相続人に最低限度保証された相続財産の一部をもらえる権利ということです。上記のように、「二女に全財産を相続させる」といった遺言があったとしても、長女には遺留分があるので、その権利を行使する(これを遺留分減殺請求と言います)と、財産の一部は長女のものになるのです。

遺留分で保証される最低限度とはどれぐらいかというと、それはその相続人の立場によります。配偶者と子供は、法定相続分の2分の1であり、直系尊属は、単独相続の場合は法定相続の3分の1、配偶者と共同相続のときは2分の1です。そして、兄弟姉妹には遺留分はありません。

冒頭の長女の場合、法定相続分は全財産の2分の1で、さらに遺留分は法定相続分の2分の1ですので、2分の1の2分の1、つまり全財産の4分の1については遺留分として権利を主張できるということになります。

「権利を主張できる」ということは、権利を主張しなければ、「二女に全財産を相続させる」という遺言自体は有効になるということです。ただ、長女がその遺言に納得できず、遺留分という権利を主張した場合にだけ、財産の4分の1が長女のものになるのです。

この権利は、意思表示だけで効果を発揮します。つまり、長女が二女に対し、「遺留分をよこしなさい!」と言った時点で、財産の4分の1が長女のものになるということです。

ちなみに、この権利を行使できるのは、自分の遺留分が侵害されていることを知ったときから1年です。